常に Questetra BPM Suiteに登録するユーザ情報を社員名簿と合わせておくのは、手動ではかなり面倒でしょう。新しい社員が入ってきたら手入力でユーザ追加、社員が退職したら手作業でユーザ削除という方法でもいいですが、自動で手元の社員名簿と同期できれば管理はずっと楽になります。この記事では、Questetra BPM Suite のユーザ情報をローカルの TSV (Tab-separated values) データと同期させる Java プログラムを紹介します。

Questetra BPM Suite の Web API について

Questetra BPM Suite には、外部プログラムからシステム設定を操作できる Web API が用意されています。この API を用いることで、ブラウザから Questetra BPM Suite を操作せずともシステム設定の変更を行うことができます。今回はこの API を利用して、ユーザ情報の操作を行うプログラムを作成します。こちらで用意した Java ライブラリをインポートすることで、API アクセスに便利なクラスが利用できるようになります。

また、外部プログラムからシステム設定 API にアクセスする際には、Basic 認証 か OAuth による認証が必要です。今回は Basic 認証を用いるので、あらかじめ Questetra BPM Suite のシステム設定で Basic 認証を有効にしておくための手順も紹介します。

開発環境

Java 1.8 + Maven 3 を使用します。また、Maven を用いて、以下の Questetra BPM Suite API クライアントライブラリをインポートします。

Questetra BPM Suite の Basic 認証を有効にする

外部プログラムから Questetra BPM Suite へアクセスする際の認証として、今回は Basic 認証を利用します。Questetra BPM Suite の Basic 認証はデフォルトでは無効になっているため、設定で有効化する必要があります。

Basic 認証の有効化には、システム権限の一種であるシステム管理権限が必要です。また、Questetra BPM Suite 上のユーザ情報の操作には、システム権限の一種であるユーザ管理権限が必要です。各種システム権限をどのアカウントが持っているかは「システム設定 > システム権限」から確認できます。

まずはシステム管理権限を持っているアカウントで「システム設定 > API クライアント」を開き、「Basic 認証による API アクセスを有効にする」にチェックを入れて保存してください。

Basic 認証が有効になると、ユーザ管理権限を持っているアカウントで「アカウント設定 > パスワード」から Basic 認証用パスワードが確認できます。

以降、Questetra BPM Suite API を利用する際の Basic 認証情報として、ユーザ管理権限を持っているアカウントのメールアドレスと、そのアカウントの Basic 認証用パスワードを用いることができます。

Maven で新規プロジェクトを作成

本記事では Java プログラムの作成に Maven 3 を使用します。まだインストールしていない方はインストールをお願いします。

用意ができたら Maven で新規プロジェクトを作成してください。EclipseIntelliJ IDEA など、Maven に対応した IDE(統合開発環境)を使用するのがおすすめです。

POM.xml の編集

Maven プロジェクトでは、使用するライブラリを POM.xml に記述することになっています。先述した Questetra BPM Suite API クライアントライブラリ com.questetra.bpms.client.swagger を POM.xml に追記してください。POM.xml はプロジェクトディレクトリ直下にあります。

<!--?xml version="1.0" encoding="UTF-8"?-->
<project xmlns="http://maven.apache.org/POM/4.0.0" xmlns:xsi="http://www.w3.org/2001/XMLSchema-instance" xsi:schemalocation="http://maven.apache.org/POM/4.0.0 http://maven.apache.org/xsd/maven-4.0.0.xsd">
    <modelversion>4.0.0</modelversion>

    <groupId>questetra</groupId>
    <artifactId>swagger-java</artifactId>
    <version>1.0-SNAPSHOT</version>

    <properties>
        <maven.compiler.source>1.8</maven.compiler.source>
        <maven.compiler.target>1.8</maven.compiler.target>
    </properties>

    <dependencies>
        <dependency>
            <groupId>com.questetra</groupId>
            <artifactId>bpms.client.swagger</artifactId>
            <version>12.3.1</version>
            <scope>compile</scope>
        </dependency>
    </dependencies>

</project>

太字の dependency 要素が追記部分です。

ユーザの検索を行うクラスを実装してみる

では、実際に Questetra BPM Suite から API を利用してみましょう。Java プログラムから Questetra BPM Suite のユーザ情報を変更する前に、まずはユーザの検索を行うところから始めましょう。

Questetra BPM Suite の API クライアントライブラリである com.questetra.bpms.client.swagger には、ユーザ情報を操作するための QuserApi クラスが用意されています。

このクラスを利用して、Basic 認証 → ユーザ情報の各種操作を行うためのクラス UserDataManager クラスを実装します。Maven プロジェクトでは {プロジェクトディレクトリ}/src/main/java/ 以下にコードを配置します。UserDataManager.java もそこに作成してください。なお、このサンプルコードをそのまま利用する場合は URL・メールアドレス・Basic 認証用パスワードを環境に合わせて書き換えてください。メールアドレスと Basic 認証用パスワードは Basic 認証の項で触れた通り、ユーザ管理権限を持っているアカウントのものである必要があります。

// {プロジェクトディレクトリ}/src/main/java/UserDataManager.java
import com.questetra.bpms.client.swagger.model.*;
import com.questetra.bpms.client.swagger.ApiClient;
import com.questetra.bpms.client.swagger.ApiException;
import com.questetra.bpms.client.swagger.Configuration;
import com.questetra.bpms.client.swagger.auth.*;
import com.questetra.bpms.client.swagger.api.QuserApi;

class UserDataManager {
    private final QuserApi apiInstance;

    public UserDataManager() {
        ApiClient defaultClient = Configuration.getDefaultApiClient();
        // URL を設定
        defaultClient.setBasePath("https://example.questetra.net/");

        // Basic 認証
        HttpBasicAuth basic 
                = (HttpBasicAuth) defaultClient.getAuthentication("basic");
        basic.setUsername("{メールアドレス}");
        basic.setPassword("{basic認証用パスワード}");

        this.apiInstance = new QuserApi();
    }

    /**
     * 登録済のユーザから指定のユーザを検索する。見つからない場合は例外送出。
     * @param id ユーザID。わからない場合は{@code null}を渡す。{@code null}以外を渡した場合は{@code email}よりも優先される。
     * @param email 登録メールアドレス。わからない場合は{@code null}を渡す。
     * @return QuserWithPrimaryQgroupWrapper 検索されたユーザ。
     */
    public QuserWithPrimaryQgroupWrapper find(Long id, String email) {
        QuserWithPrimaryQgroupWrapper result = new QuserWithPrimaryQgroupWrapper();
        try {
            // ユーザを検索
            result = this.apiInstance.findQuser(id, email);
        } catch (ApiException e) {
            // 例外処理
            System.err.println("Exception when calling QuserApi#find");
            e.printStackTrace();
        }
        return result;
    }
}

UserDataManager クラスのメソッド find は、ユーザ ID(Long 型)か メールアドレス(String 型)でユーザを検索できます。ユーザ検索には QuserApi クラスのメソッド findQuser を用いています。

この find メソッドを用いて実際にユーザ検索をしてみましょう。次のような Test クラスを作成してください。

// {プロジェクトディレクトリ}/src/main/java/Test.java
import com.questetra.bpms.client.swagger.model.*;

class Test {
    public static void main(String[] args) {
        UserDataManager test = new UserDataManager();
        QuserWithPrimaryQgroupWrapper user = test.find(null, "{検索するユーザのメールアドレス}");
        System.out.println(user);
    }
}

UserDataManager クラスのインスタンスを作成し、find メソッドを実行するようになっています。ユーザ ID より メールアドレスの方がわかりやすいので、サンプルコードではユーザ ID は null にしてメールアドレスを入力することにしています。該当のユーザが見つかれば標準出力にユーザ情報が表示されます。ビルドして実行してみましょう。

> class QuserWithPrimaryQgroupWrapper {
>     quser: class QuserWithPrimaryQgroup {
>         email: questetra+Canarias@gmail.com
>         id: 11
>         name: カナリア
>         primaryQgroup: class Qgroup {
>             email: 
>             id: 2
>             name: 10 管理部
>             parentQgroupEmail: 
>             parentQgroupId: 1
>             parentQgroupName: 00 全社
>         }
>     }
> }

このような表示が出ましたでしょうか。該当ユーザが見つからなかった場合は例外が送出されます。

このように、com.questetra.bpms.client.swagger をインポートすることで Questetra BPM Suite の API を利用できるようになります。次の記事ではこの UserDataManager クラスにユーザアカウント情報操作に必要なメソッドを追加し、ローカルの CSV ファイルと Questetra BPM Suite でユーザアカウント情報の同期を行うクラスを新しく実装します。

次: ユーザ情報をローカルデータと同期させる(ユーザ情報編)

「ユーザ情報をローカルデータと同期させる(準備編)」への2件のフィードバック

  1. ピンバック: QBPMS のユーザ情報をローカルデータと同期させる(ユーザ情報編) – Questetra Support

  2. ピンバック: ユーザ情報をローカルデータと同期させる(ユーザ情報編) – Questetra Support

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